ゆる院生のブクマ

ゆるゆる生きる京都の大学院生の日常とか。あったことや思ったことをすぐに忘れてしまうので、ブックマークを残すことにしました。

【初ブログ】非読書家の読書体験 ―大垣書店『羅(うすもの)』と『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』―

大垣書店で無料配布されていたオリジナル雑誌『羅(うすもの)』1号

装丁に惹かれ何気なく手に取ったこの一冊。

軽い気持ちで読んでいたら、とりとめもないことが心に浮かんできました。

心に移りゆくよしなしごとを書き残しておきたいと思い、初めてのブログを書いてみます。

 

『羅(うすもの)』という言葉は、『徒然草』第八十二段「羅の表紙は、疾く損ずるがわびしき」から引かれました。この段には、物事を完璧に整えてしまうことはよくない、不完全な物事こそが味わい深く、仕事の命を将来に繋ぐものだ、という意味が込められています。

雑誌『羅』コミュニティ―うすもの談話室開設! - 大垣書店

 

 

気付いたら夢中で読んでいた『羅(うすもの)』

書店内のカフェで勉強するため訪れた大垣書店

帰り際、店頭に置かれた無料雑誌に気づいた。

トレーシングペーパーのような半透明のカバーとデザイン性のあるオシャレな装丁に惹かれ、「これ無料なのすごい!!」と浮かれつつ持ち帰った。

 

『羅(うすもの)』

 

正直なところ、がっつり読む気は全くなかった。

読書の習慣はなく、普段は研究関連の書籍か、たまに話題のミステリー小説や自己啓発本を読む程度。必要/目的のある読書しかしていない私は、この本の内容に全く期待をしていなかった。

でもせっかくなのでと、1番はじめに掲載されていた小説を読み始めた。気づいたらストーリーに引き込まれていて、あっという間に全11ページを読み終えていた。

 

読み終えてから、これが連作小説であり2号を手に入れないと続きが読めないことに気づいた。続きが読みたくてたまらなくなったが、手元にないものは仕方がない。

2号はいつ出るのだろう、そもそもこれはどういう雑誌なのだろうと思い、少し調べてみた。

オリジナル雑誌『羅(うすもの)』

本誌は、書店への誘客や書籍の紹介に加え、リアル・ネット両方で活動しメディアを問わないコンテンツを広く展開することで、全国の読書人のコミュニティとなり、また読書文化への入口となることを目指しています。京都を拠点に活動する批評家、黒嵜想が編集し、気鋭の書き手による小説・紀行文・インタビュー・書評等を掲載。

www.books-ogaki.co.jp

 

2号の出る時期は分からなかったが、年に数回の発行を目指しているとのこと。

「本屋でもらえる本を本屋がつくる」大垣書店のプロジェクトとして、クラウドファンディングを実施していたことも知った。

京都発のプロジェクトということでさらに興味が湧き、すぐに他の作品・書評も読んだ。

 

『うすもの』1号に掲載されていたのは、連作小説の他に連作紀行文、装丁家へのインタビュー記事、そして書評が4つ。

途中で飽きるかと思っていたが、普段読まないジャンルや知らない世界の話を読むのは楽しく、一気に読み切った。

 

遠くアイスランドの地殻に触れ感じた「地殻変動」というスケールの大きな現象と、「呼吸と嚥下」という極めて日常的な動作とを重ね合わせ、声を得た代わりに窒息・誤嚥リスクを高めた人間を想起する紀行文。

はたまた、苦境ではあるが多種多様な『紙』を未来に残そうとする紙工場、「繊維からなる紙」へのこだわりを語る装丁家

 

自分の知らない世界や、思いもよらない発想ばかりでとても新鮮だった。

普段、全く知らない世界に飛ぶコムような読書体験がないのも相まって、「これが視野が広がる感覚か??」と興奮してしまった。

 

本の「ノイズ性」の魅力を体感(『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』)

そういえば、「現代(の働く)人は、必要な情報をダイレクトに求めるため、本を読まなくなった」という話を最近目にしたなあと思い出した。

 

書店で目にした、三宅香帆さん著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』だ。

この本を読んだことはないのだけれど、YouTube「PIVOT公式チャンネル」で、本書の著者が対談形式で内容を語っているのを以前見たことがあった。

 

youtu.be

 

  • その本を読もうと思ったときには想像していなかった情報が入ってくる点で、本は特徴的なメディアである。
  • すなわち、欲しい情報以外が入ってくる「ノイズ性」が本にはある。
  • この「ノイズ」にあたる、歴史・社会的文脈や周辺情報が入ってくることで、「意外と面白いじゃん」と気付けることがある。
  • 「知りたいこと+ノイズ」が知識であり教養である。

このような内容だったと思う。

 

私は『羅(うすもの)』の読書を通じて、まさにこの「ノイズ性」を楽しめた。

 

ネット検索やYouTubeSNSでお目当ての情報をダイレクトに求め続け、私の世界は偏ったものになっているのを自覚している。

もちろん研究や趣味が第一優先だが、たまには知らないジャンル手を伸ばしたいな。

 

 

ブログの第1話にして冗長な文章を生成してしまいました。

自己満足の記録ですが、どなたかの目に留まっていましたら嬉しいです。

 

追記

『羅(うすもの)』1号の転倒」配布は7月末までのようですが、ECサイトでは販売されていました。

『羅(うすもの)』1号 | NEUTRAL Online by OGAKI BOOKSTORE